『Imagine Revolution』
熱砂の砂漠を土煙を上げながら二機のロボットが飛ぶ。片方は白黒のモノカラーでカラ
ーリングされた人型の機体、それを追走するようにブラウンカラーにカラーリングされた
四つの四肢で走る獣型の機体。
獣型は装備されたキャノン砲やミサイルを放つが、人型はそれをヒラリ、ヒラリと回避
していく。獣型の機体が速度を上げて追い付こうとすると、人型は腕に装備した銃から弾
を撒き牽制をする。
長い追従戦の後、ひとつの砂丘を越えた所で。獣型のキャノン砲から放たれた弾丸が、
人型を掠め人型は砂の上へと墜落した。その際数発の弾丸を地面に撃ちこんでいたのには
獣型は気づくことはなかったが。
土煙を上げて倒れる人型、そこへ獣型がゆっくりと近づいたその時。
突如、獣型の立つ地面が陥没し獣型を飲み込んだ。
脱出を試みようともがく獣型だが、流れる砂に獣の四肢では全く対処ができず。ズルズ
ルと砂の中へ沈み始める。
もがく獣型の前で人型は起き上がり、這い上がろうとする獣型の眉間にビームライフル
を押し付け
『地下水脈を活性化させるとこういうことも出来るんだ。おぼえとけ。』
と言うと、引き金を引いた。
「ふぅ……」
コントローラーを脇に置き、椅子を軋ませグッと伸びをする。背骨が音を立てるのが心
地良い。
正面に置かれたパソコンの画面には『Winner ブレイク』と表示され、リザルト画面に
移り。獲得資金、経験値が表示されていく。
「前回の優勝者って言うからちょっと期待したけど……。あんた、大したことはないな、
と」
リザルト画面後の交流所にて先ほど戦った相手へとキーボードから一言打ち込むとログ
アウト。
椅子から立ち上がり窓を開けると朝日が昇っていた、時刻は七時ジャスト。またしても
徹夜、これで三徹目である。
「ま、学校で寝ればいいか……」
手早く身支度を整え、朝食は適当に済ます。
ちなみに朝食を作ってくれる親は居ない。父親は宗也が子供の頃に離婚をし、残った母
親は女手一つで宗也を育ててくれたが3年前に他界した。
高校生になった事により残った家は、宗也が引き取り一人暮らし。現在は、離婚した父
親からの仕送りで生計を立てながら暮らしている。
だが、十六歳と言う若さで親から解放された宗也の生活は堕落していき。現在では致命
傷なまでのネットゲームジャンキー、ネトゲ廃人になったのである。
食パンを水で流しこみ、家を出る。家を出て幼馴染の野上秋乃に会うが華麗にシカト…。
「おはよ、宗ちゃん。 ……ちょ、こら! 無視するな!」
は出来なかった。
野上 秋乃。隣家の幼馴染、赤ん坊の頃から付き合いは幼稚園、小学校、中学校、高校と
もう十年以上になる。母親が他界して、一時期は秋乃の家に引き取られお世話になってい
た事もあり。秋乃には返しきれない恩を感じている所もあるが、それは置いておく。
姉御肌の気質がある秋乃が横から「朝ご飯はしっかり食べたのか?」「夜更かしばっかり
してると体に悪いよ?」などと小言を言ってくるのを空返事しながら、右耳から左耳へ華
麗にスルーさせつつ。一緒に登校する。
一時期は朝食が偏っているのがバレた時は、毎朝朝食を作りに来たが。土下座をして追
い返したのが記憶に新しい。
周囲からは、ここまで甲斐甲斐しく宗也を気にかけている秋乃とは出来ている。などと
噂されているが、全力否定させてもらう。
学校に着けば、また面白くもない一日が始まる。特に楽しみもなく、只々時間を浪費し
ていく時間。こんな所で油を売っている暇があったら、帰って自機のレベル上げに貢献し
ている方がよほど有利な時間と言える。
だから、こんなつまらない学校でやることと言えば只一つ。
「寝るか」
睡眠時間を養う位である。机に突っ伏し、目を閉じる。良い感じに意識が朦朧として、
沈んでいく感覚。あぁ、これはグッスリと行けそうだ……。
時間は流れて放課後――。
結局今日は一日中寝ていた、ここ最近はこんな学校生活を送り続けている。こんな生活
をしていても、宗也の成績はクラスで上の中くらいであるから人間不公平である。
こんな宗也でも数少ない気の合う友は居るもので。そいつ等と帰り際に少しだけ立ち話
をし、各々に別れを告げ帰路に着く。帰宅時も登校時と同じく秋乃と下校することが多い。
高校に入る前なら、このまま秋乃の家にお邪魔して夕飯を御馳走になることもあったのだ
が。最近はコンビニ弁当や、自炊という名のくった妄想つもり食事で済ませたりすることが専ら。
「また困ったら私がご飯作りに行ってあげるから、いつでも言ってよ?」
「やめてくれ、いい加減恥ずかしいんだよ。こっちは。大体お前俺達がクラスの連中から
なんて言われてるのか知ってるか!?」
押し問答を繰り返しながら歩く。
「そういえばさ……」
ふと、秋乃が話題を変える。
「宗ちゃんも、あのゲームやってるの? クラスの男子が話してる奴」
「あのゲーム? あぁI・Rか? やってるけど、それがどうかしたか?」
ネットゲーム、Imagine Revolution。通称I・R。リアルなフィールド構成や、自由な操作
性に自機のカスタマイズの自由度の高さ。様々な面で他のネットゲームの上を行っており。
今、世界規模で人気の3Dロボットアクションゲームである。
宗也がはまっているネットゲームもこのゲームであり。廃人の域に達している宗也のレ
ベルは高く。腕利きのゲーマーよりも良い動きをするプレイヤーなのである。
「そっか、宗ちゃんもやってるんだ。」
「なんだよ? お前もやりたくなったのか? やめとけやめとけ。お前じゃあのゲームは
無理だ」
「あ、ひっどーい! 私だってアクションゲームの一つや二つくらい……」
「少し前に練習してきたって言って、俺にボロクソにやられた奴はどこのどいつだったか
……」
秋乃は料理腕だけは天下一品なのだが。ゲームやパソコンなど機械いじりとなると途端
にもダメダメ。どうしてここまで不器用なのだろうかと感心してしまうほどのダメっぷり。
「違うの……最近、宗ちゃんいつも眠そうにしてるし。このままだと体を壊さないか心配
で……それに、進路のことだってあるし……」
「大丈夫だっての。お前ら女子みたいに、やわな体してないし、少なからずお前よりかは
頭が良い確信はある」
一しきり秋乃をからかい、家の前に着き秋乃とも別れ家に入る。
家の玄関を開けてからの行動が最近全く同じになってきているのに気がついたのはいつ
の事だっただろうか。玄関を閉め後ろ手でカギを掛け、部屋に入り椅子に座りマイク付き
ヘッドフォンを付けパソコンの電源を入れる。
ここ一週間ほどは毎日これを繰り返していた
「ま、どうでもいいか」
パソコンが起動したらメールをチェックし、軽くネットサーフィンをして。I・Rのアイコ
ンをクリック。立ち上がるクライアントに手慣れた手付きでIDとパスワードを入力、そし
て今日もまたI・Rの世界へと入っていく。
ログイン作業が終了すると見慣れたローディグ画面が広がり。昨日ログアウトした、交
流所からのスタートであった。
ログインして直ぐに『Calling』と画面の右下に表示され。I・Rで知り合った人から通信が
入った。
『やぁ、ブレイク。今日も早いね?』
『どもっす、御剣さん。そっちも今日はお早いようで』
『早いも何も今日は一日中ここに居るけどね? しがない一日こうやって露店を構えて通
行人観察……たまらんねぇ』
I・Rは某所の無料ネット電話のシステムと互換性があり、そのシステムを使うことによっ
て、この様に気軽に誰とも話が出来るのも大きな特徴である。プライバシー面への考慮も
されており、設定でボイスチェンジャーを付る事も可能であり、交流の要ともなっている。
そして今宗也に通信を入れたのは御剣さん。
宗也がI・Rを始める前からこのゲームの住人であり、I・Rを始めたばかりの頃の宗也を
色々と助言や助力をしてくれたいわばI・Rの恩師的な存在である。
当初は宗也よりも技術も力量も上だったが今では過去の栄光、今は自分が過去に集めた
武器などを露店で売ったり武器を作ったりして新人や知り合いを助ける、言わばOB的な存
在になっている。
『今日はこれからどうする? ひとつ元師匠と手合わせでもするかい? こっちはもう勝
てる気はしないけどね』
『あぁ……。いや今日は遠慮しておきます。』
『あらそう、残念。……あ、そう言えば一つ噂なんだけどね?』
『噂?』
『なんでもあのクイーンが最近帰ってきたらしい。まだ確証は無いんだけども、見かけた
って奴が居てな』
『クイーン……あいつか……』
まだ人がまばらな交流所を抜け『んじゃ、気を付けてな〜』と言い残し通信を遮断した御
剣さんと別れ、対戦募集地をJAPANからWorldへと変更し。
『対戦歓迎』
と、いつも通りのすこし挑発気味の看板とアイコンを掲げ待機に入る。募集地が日本の
時はそれこそ宗也に挑む奴は少ないが。募集地を世界中に広げると挑発的な看板に寄って
くる奴は多く、看板を上げて一分と経たないうちに。対戦を挑んでくる輩が現れた
「やっぱり、こっちだと食い付きがいいな。えっと相手は……。え……」
挑んできたのは同じ日本からのログイン者。しかも女性。
そこまでは良かった、そのログイン者に付けられた名前。その名前には反応せざるを得
なかった。
「Quravis(クラヴィス)……出やがった」
Quravis。宗也がI・R内で実力をつけ頭角を出し始めていた頃、最強のクイーンとして頂
点に君臨していた者の名前。当時宗也も挑んだこともあり、その当時の実力は現在の宗也
でも、勝てるかどうか怪しい位の実力であった。当時は最強と言われていたクイーンであ
ったが、ある日突然ログインしてこなくなり。そのまま帰ってくることはなかったが、今
になりこうして再び現れたのである
「噂通りか、でも偽物か……。はたまた本物か……。戦ってみなけりゃわかんねぇか」
Quravisからの挑戦にOKをクリックし承諾する。すると画面は『NOW LOADING』に
なり、やがてガレージに変わり武器を選択していく。当時挑んだ時からは格段に進歩した
装備やテクニック。今の宗也には自身が負けるなどと言う未来は想像だにしていなかった。
装備を整えステージを選択しスタート。画面の中央の文字が「READY?」から「GO!」
へと変わった直後に、宗也のアバター、ブレイクは加速した。
結果から言うと試合時間は五分と持たなかった。Quravisは、ばら撒かれる弾丸を容易く
避け。後のために設置しておいたトラップも悉く潰し、あっという間に接近し格闘連打で
一閃。ヒット&ウェイで同じ事を繰り返され、呆気なく敗北。
試合終了後には『LOSE ブレイク』の後に『NEW RECORD!!』という文字まで出され
てしまった。
「…………」
唖然。宗也はコントローラーを片手に、口をぽかんと開けて呆けていた。
何もできなかった。戦闘にすらならなかった。相手の攻撃を回避することも、相手に銃
弾を当てることも、使い慣れたトラップに相手を誘導することも出来なかった。
今の戦いと比べると、過去がむしゃらにQuravisに挑んでいた時の方がしっかり戦えて
いた様な気さえしてくる。
完全な敗北であった。
その敗北の日を境に、宗也の生活はますます荒んでいった。毎日の様にQuravisに挑み、
そして敗北。もともと、勝利者として廃人と化していた宗也に敗北は通常以上の痛手とな
り。自分の自尊心を挫かれ、勝つ事への執着を強くする一方になっていく。
現れるQuravisも毎日、相手こそしてくれるがそれも全く同じ時間に一日一度だけ。戦
いが終わると何も告げずにログアウト。その行為が宗也の心を逆なでし更にストレスを溜
めていった。
数週間後。日に日に口数が減り、眼の下は隈で黒く、目も死んだ魚の様に淀み。常にイ
ライラと貧乏ゆすりをし、誰が話しかけてもキッと睨み付け。何かに憑かれたようにブツ
ブツとうわ言を口走る。本当の廃人と化した宗也がそこに居た。
この状態の宗也がここまで毎日学校に出て来られるのは、偏に甲斐甲斐しくしてくれる
秋乃が居るからであった。
朝は何時までも家から出てこない宗也を起こしに行き、朝食を用意し。学校に引っ張っ
てくる。帰りも学校で睡眠を養う宗也をたたき起し家に連れて帰る。完璧な廃人となった
宗也を手遅れと感じたのか、それとも幼馴染の情けか。今まで以上に甲斐甲斐しく宗也を
支えていた。
だがある日。
「あぁもう! いい加減にしてよ!!」
帰り道、無言で隣を歩く宗也へと怒鳴り散らした。
「……何がだよ……?」
「私が話しかけても空返事ばっかり! 私がいま言った事聞いてた?」
「………」
「いつまでもいつまでもいつまでもいつまでも!! 何時までそうやって居るつもり!?
たかがゲームで負けてるくらいでしょ!? そんなので何時までも廃人みたいにやってる
つもり!?」
怒鳴り散らした秋乃の声が夕暮れの住宅街に響き渡った。
「たかがゲーム? ……はっ、お前にとっちゃたかがゲームなのかもしれないけどな!!
俺にとっちゃ大問題なんだよ!! お前に分かるか!? 今まで築いてきたものが全部木
っ端微塵に砕かれる気持!!」
「そんなのあんたが安いプライドを守りたいだ」「もういい……」「け……」
「もういい、分かった。これ以上俺に構うな、もう朝も来なくていいし朝飯もいらねぇし。
学校でも話しかけるな!! 放っておいてくれ!!」
秋乃を置いて走り出し、家へと駆け込み後ろ手でカギを掛ける。肩で息をしながら部屋
に駆け込む。何時ものようにパソコンを起動しメールチェックも無視でI・Rを起動し、い
つもQuravisが現れる場所へ行く。
『よぉ、ブレイク。最近……ってあら?』
途中御剣さんに声を掛けられるが無視。何時もの場所に到着し待つこと数分。
「来た……」
昨日ログアウトした場所と同じ場所にQuravisは現れた。早速Quravisへと対戦を申し
込む。
「今日こそ……今日こそぉ……」
だが、いつもなら直ぐにでも始まる対戦が始まらない。イライラしながらQuravisの出
方を見ていると、Quravisから『Calling』と通信が入った。幾度なく戦ってきたがQuravis
が誰かに対話をするのは初めての事であった。聞こえてくるのは女性の声、ボイスチェン
ジャーを付けているのか分からないが澄んだ女性の声であった
『聞こえているか? 何時も私に挑んでくるお前。いや、ブレイク。お前がどういう気持
ちで私に挑んでくるのか分からないし。何故こうまでして挑んでくるのか分からないが、
それも今日までだ。私は今日お前と戦いそれを最後にI・Rを完全に引退するつもりだ』
『な……』
『勝ち逃げされる気がするかもしれないが。分かってほしい、私も生活が忙しいんだ。…
…だから、最期として全力で相手をし。叩き潰してやろう』
最期?全力?この言葉が本当ならば。
『今までのは只のお遊戯だったって訳かよ……』
絶望とはまさにこういう事なのだと。生まれて初めて実感した。
『ま、そうなるな……すまない。……だから、お前も全力で来い。昔のお前の様にな』
自分のステータスページを開き機体の状態を確認する、ここ数週間の連戦で機体の至る
所が破損状態になり。全快状態と比べると二十五%も出力がダウンしてるのが分かった。
今までなら、こうなるまで自機の調整を怠ることは無かった。少し頭を冷静にして考えれ
ば、当然の事だったのに。
『少し機体を調整しなおしてくるといい、一度頭を冷やし良く考えろ。調整が済んだら、
また話しかけろ』
そう言って、AFK (Away From Keyboard)状態になってしまったQuravis。一度突き放さ
れると、頭の中が水に流されたようにスッキリした。ずっと靄がかかっていた様な視界が
妙にクリアになっていく感覚。一度自分もAFK状態にし、洗面所に駆け込み水で顔を思い
切り洗う。今度は台所に駆け込み、冷蔵庫を開け残っていた牛乳を一気に飲み干す。イラ
イラした感覚が更に薄れていった。
すっかりと覚醒した頭で自分の機体を整備し改めて武器の吟味を行う。
冷静になると自分のおかしなところがはっきりと出てくる。遠距離用の武器を付けている
のに、トラップは接近戦闘用だったり。近接武器とブーストの相性もバラバラ。
「何だよこれ、本当に今までこんな装備で戦ってたのか……。俺……」
そして、もう一度武器と機体の相性を考えなおし、機体のステータスを変更し――
『またせた。』
AFK状態のQuravisへと通信を送り込んだ。
『もう、いいのか?』
『あぁ』
『そうか……。では、行くぞ』
Quravis が戦闘を挑んできました。 (承認?) 非承認?
装備を整えステージを選択しスタート。今回も、何時も通り一番ベーシックなステージ。
廃屋。豊富な障害物と上空の広さ、高低差の少なさ。I・Rをやる人なら必ず誰もが1度は使
うステージ。
画面の中央の文字が『READY?』になる。二機のロボットが廃屋の両端へと転送されて
くる。宗也の機体はここ数週間でついた汚れは綺麗に落とされ従来の白黒のモノカラ―へ
と戻り武装も今の宗也が全力で持って戦える装備へと変更されていた。
Quravisも従来の近接装備とは変わり、高出力遠距離ロングバスターに無線式オールレン
ジ攻撃兵器(通称ビット)。
『ずいぶんと両端から両端へと装備が変わったな』
3
『すまんな、これが私の本気だ』
2
『まぁいいさ、俺も本気だ。ここまでの数週間の俺は忘れてくれ。』
1
『そうか』
Go!
走り出す二機。ブレイクは廃屋の要所要所へと設置罠をし掛け、一部に予め近接攻撃を
加えながら物陰を伝い影を移動していく。
Quravisは一度後ろに下がり六機のビットを展開、廃屋内へとビットを二機進ませ。その
間も自機はロングバスターの出力を最大限へとチャージ。
そして数秒後、廃屋の一か所で爆発があがる。爆発は徐々に移動しながらQuravis側の
側面を回り後方へと回りこんできていた。ビットがブレイクを追尾しているのだろう。
『……』
やがて、爆発がQuravisの前まで接近し、噴き出す炎と共にブレイクが飛び出し腕部に
仕込んだガトリング砲から銃弾をばら撒く。即座に周囲に展開していたビットで防壁を張
り防ぐ、と同時にこちらも肩からミサイルを数発撃ちこむ。落下しながら、自分に支障が
出るミサイルのみをバルカンで撃ち落とし、落下。と同時にブーストを吹かし一気に接近、
ビームソードで斬りかかるがビットからの攻撃に阻まれ体制を崩してしまう。
『そこ』
最大とまではいかないが、ある程度チャージされたロングバスターのトリガーを引く。
銃口から放たれた太いビームがブレイクを飲み込む。少し撃ったら止める、すべて撃ちき
らないのは次の手のためにある程度残しておかないと迎撃が出来ないからである。
土埃が晴れると、そこにブレイクの姿は無い。
『……上!』
咄嗟にバックステップで下がる、今までQuravisが立っていた場所に4発の銛が打ち込
まれた。上へと視線を向けるが、そこには太陽。一瞬視界が真っ白になり、動きが止まる。
そこへ続けざまに銛が4発撃ちこまれるが、またしてもバックステップで回避。
カメラが正常に戻ったのを確認すると上空からビームソードを構え降ってくるブレイクが
確認できた。
『ぬぁぁあああ!!』
ビットで迎撃するが6機すべて切り捨てられ、さらに接近される。仕方なくロングバス
ターを投げつけバルカンでロングバスターを撃ち爆発。そのすきに更に距離を取る。すで
に戦場は廃屋構内へと入っていた
『やはり、あの男。これだけの力を持っていたか』
廃屋内をブーストで駆け抜け距離を置く、振り返るとブレイクの姿は無く。あるのは薄
暗い廃屋構内に広がる無数の赤い点。
『これは!!』
ズズズズズズズ…………。
少し離れた場所ですさまじい爆発が上がった。
『かかった……』
試合開始当初にし掛けた最も基本的なトラップ、センサーボム。対象がセンサー内に入
ると自動で爆発するモーションセンサー爆弾の一種である。おまけに予め廃屋内を攻撃し
脆くしておいたので、瓦礫の雨のおまけつき。
煙が上がる方向へ向かうと、案の定瓦礫に埋もれたQuravisの機体があった。
『ざまぁみろ』
動けないQuravisの機体の頭部めがけてガトリング砲を構え、容赦なく撃ちこむ。土煙
が上がるとそこには、機体の至る所から煙を上げるブレイクの姿があった
『ぐぁああ!!』
『ざまぁみろはお前です。ダミーシルエットすら見破れない』
ダミーシルエット、己の分身を生み出しそれに攻撃した者へとその攻撃をそっくりその
まま返す設置型反射トラップである。
膝をつき倒れるブレイクへと、ビットを飛ばす。ビットから放たれた電磁線に囚われ身
動きが取れなくなる。
『今日のあなたは最高でした。今まで戦ったどの人よりも良かった、これで私も心おき
なく引退できます』
『……』
Quravisの胸部が展開し現れる巨大な砲門。
『本当にありがとう……そして、さようなら』
「ふぅ……」
コントローラーを脇に置き、椅子を軋ませグッと伸びをする。背骨が音を立てるのが心
地良い。
正面に置かれたパソコンの画面には『LOSE ブレイク』と表示されている。
「結局越えられなかった……。高い壁だったなぁ……」
リザルト画面後に戻った画面にQuravisの姿は無い。
椅子から立ち上がり窓を開ける今日は満月だった、時刻は午後十時ジャスト。パソコン
を落としベッドに横になる。
「あ……秋乃に謝らないと……」
ふと、思い出した秋乃の事。自分が悪いとはいえ、結構ひどい事を言ってしまった事が
今更心に重くのしかかってくる。
「謝らない…と、な……」
そう思い、手を伸ばした携帯電話に手が届く前に。宗也は意識は眠りに落ちた。
薄暗い部屋をパソコンの光が照らす。
「宗ちゃん、怒ってるかな……」
こんなやり方でないと話せないのが歯がゆい。
「私も色々怒鳴っちゃった……。私のせいなのに……。私に宗ちゃんを怒鳴る資格なんて
ないのに……。謝らなきゃ、ちゃんと宗ちゃんに謝らないと……。宗ちゃんまだ起きてる
かな……起きてるよね?」
パソコンを放置して部屋を飛び出す。母親に一言告げ家を飛び出す。
放置されたパソコンの画面に映るのはI・Rのログイン画面。そしてそこに映るアバター
に付けられた名前は。
Quravis。